ブラシレスモータには、ロータの配置によってインナーロータ型とアウターロータ型があります。構造の違いは、トルクや応答性、回転の安定性、放熱性などに関係するため、用途に合わない形式を選ぶと、求める性能を十分に発揮できない場合があります。
モータ選定では、それぞれの特徴を理解し、必要な回転数やトルク、設置スペースなどを踏まえて比較することが重要です。当記事では、インナーロータとアウターロータの構造や性能の違い、メリット・デメリット、主な用途、選び方までわかりやすく解説します。
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インナーロータとアウターロータとは

インナーロータとアウターロータは、モータ内部におけるロータ(回転子)とステータ(固定子)の位置関係による分類です。インナーロータはロータがステータの内側、アウターロータは外側に配置されます。
どちらもロータとステータの間に生じる磁力を利用して回転する点は共通しています。ただし、ロータの位置や回転半径が異なるため、トルクや応答性、慣性モーメント、放熱性などの特性は同じではありません。
用途に合ったモータを選ぶには、両者の構造と特徴を理解することが重要です。
インナーロータとは
インナーロータは、ロータをステータの内側に配置し、モータの中心部が回転する構造です。ブラシレスモータでは、ロータに永久磁石、ステータにコイルを配置する構造が一般的ですが、磁石やコイルの配置は製品によって異なる場合があります。
ロータを小径にしやすいため、回転のしにくさを表す「慣性モーメント」を抑えやすい点が特徴です。慣性モーメントが小さいほど、起動・停止や加速・減速に素早く対応できます。
また、ステータを外周側に配置する構造では熱を外部へ逃がしやすく、高速回転や頻繁な速度変更を伴う用途にも適しています。
アウターロータとは
アウターロータは、ロータをステータの外側に配置し、モータの外周部が回転する構造です。ブラシレスモータでは、外側のロータに永久磁石、内側のステータにコイルを備える構造が一般的ですが、具体的な配置は製品によって異なります。
ロータの回転半径を大きく確保しやすいため、大きなトルクを得やすい点が特徴です。一方、回転部分が外側に広がることで慣性モーメントも大きくなりやすく、急な加減速には不利になる場合があります。
薄型・扁平形状にも設計しやすく、ファンや送風機、ダイレクトドライブ機構などで採用されています。
インナーロータとアウターロータの違い

インナーロータとアウターロータは、構造の違いによってトルクや応答性、形状などの特性が異なります。主な違いは以下のとおりです。
| 比較項目 | インナーロータ | アウターロータ |
| ロータの位置 | ステータの内側 | ステータの外側 |
| 慣性モーメント | 小さくしやすい | 大きくなりやすい |
| トルク | 大トルク化には工夫が必要 | 大きくしやすい |
| 応答性 | 高めやすい | 相対的に不利になりやすい |
| 回転速度の変化 | 素早く対応しやすい | 急激な変化を抑えやすい |
| 回転数 | 高速回転向けに設計しやすい | ロータ強度などの確認が必要 |
| 放熱性 | 放熱経路を確保しやすい | 冷却設計が重要 |
| 形状 | 小径・円筒形状にしやすい | 大径・薄型にしやすい |
※一般的な構造上の傾向であり、実際の性能は製品の設計や使用条件によって異なります。
インナーロータは高速回転や応答性、アウターロータはトルクや急激な回転速度の変化を抑えたい用途に適した傾向があります。各項目の違いを詳しく見ていきましょう。
構造・慣性モーメントの違い
インナーロータとアウターロータでは、ロータの配置によって慣性モーメントに違いが生じます。慣性モーメントとは、回転している物体の速度を変えるときの「動かしにくさ」を表す値です。
インナーロータは小径のロータをステータの内側に配置するため、慣性モーメントを小さくしやすく、素早い加減速に向いています。対してアウターロータは外周側にロータを配置するため、慣性モーメントが大きくなる傾向です。
加減速では不利になりやすいものの、慣性が大きいことで急激な回転速度の変化を抑えやすい傾向があります。
トルクの違い
トルクを大きくしやすいのは、一般的にアウターロータです。トルクは物体を回転させる力で、同じ力を加える場合でも、回転中心から力が作用する位置までの距離が長いほど大きくなります。
アウターロータはロータの半径を大きく確保しやすいため、低速で大きなトルクを必要とする用途にも適した構造です。インナーロータはロータが小径になりやすく、同程度の外形条件では大きなトルクを得るうえで不利になる場合があります。
ただし、実際のトルクは磁石や巻線、モータの寸法、電流、冷却条件などにも左右されるため、ロータ形式だけで判断できません。
回転数・応答性の違い
回転数や加減速への応答性を重視する場合は、インナーロータが適した構造といえます。ロータを小径にして慣性モーメントを抑えやすく、起動・停止や速度変更に素早く対応できるためです。
アウターロータは慣性モーメントが大きくなりやすく、急な加減速では相対的に不利ですが、負荷変動などによる急激な回転速度の変化を抑えやすい傾向があります。ただし、「インナーロータ=高速」「アウターロータ=低速」とは限りません。
最高回転数はロータの強度や磁石の固定方法、軸受、発熱などにも左右されるため、製品ごとの仕様確認が必要です。
サイズ・放熱性の違い
モータの形状にも、それぞれ異なる特徴があります。インナーロータはロータを小径にしやすく、細長い円筒形状に対応しやすい構造です。発熱源となるステータが外周側にあるため、ケースや取付面を通じた放熱経路も確保しやすくなります。
アウターロータは外周側にロータを配置するため、大径・薄型の形状にしやすい点が特徴です。軸方向の設置スペースを抑えたい機器では、メリットを生かしやすいでしょう。
放熱性については、ロータ形式だけでは決まりません。ケースの材質や取付方法、周囲温度、負荷率、冷却方式なども確認したうえで判断する必要があります。
インナーロータのメリット・デメリット

インナーロータは、ロータを小径にしやすく、慣性モーメントを抑えやすい構造です。そのため加減速への応答性や高速回転への適性を高めやすい一方、大きなトルクを得るには設計上の工夫が必要になる場合があります。
ここでは、インナーロータのメリットと注意点をそれぞれ解説します。
インナーロータのメリット
インナーロータの主なメリットは、加減速への応答性を高めやすい点です。ロータが小径で回転軸の中心に近いため、慣性モーメントを小さく抑えやすくなります。
そのため、素早い起動・停止や頻繁な速度変更が必要な用途にも適した構造です。また、巻線を備えたステータが外周側にあり、ケースや取付面を通じて熱を逃がしやすい点もメリットです。
高速回転や可変速運転を行うファン、ポンプ、搬送機構など、応答性と放熱性が求められる用途で活用されています。
インナーロータのデメリット
インナーロータは、同程度の外形条件で比べた場合、アウターロータより大きなトルクを得にくい傾向があります。ロータが小径で、回転中心から電磁力が作用する位置までの距離を確保しにくいためです。
高トルクと小型化を両立するには、磁石や巻線、磁気回路などの工夫が求められます。また、高速回転ではロータや磁石に大きな遠心力がかかる点にも注意が必要です。
最高回転数だけで判断せず、磁石の固定方法やロータの強度、軸受なども含め、使用条件に適した仕様かを確認する必要があります。
アウターロータのメリット・デメリット

アウターロータは、ロータの回転半径を大きく確保しやすく、大きなトルクを得やすい構造です。また、慣性モーメントが大きくなりやすいため、急激な回転速度の変化を抑えやすい特徴があります。
一方で、頻繁な加減速や装置への組み込みでは注意すべき点もあります。ここでは、アウターロータのメリットとデメリットを整理します。
アウターロータのメリット
アウターロータの主なメリットは、大きなトルクを得やすい点です。ロータを外周側に配置するため、回転中心から電磁力が作用する位置までの距離を確保しやすく、低速域でトルクを必要とする用途にも適しています。
また、ロータの慣性モーメントが大きくなりやすく、急激な回転速度の変化を抑えやすい点も特徴です。加えて、軸方向の長さを抑えた薄型・扁平形状に設計しやすいため、設置スペースに制約がある機器でも選択肢となります。
アウターロータのデメリット
アウターロータは慣性モーメントが大きくなりやすく、急な加減速や頻繁な速度変更には不利な場合があります。起動や停止、反転にも大きな力が必要になるため、動作を素早く切り替える用途では負荷慣性を含めた検討が欠かせません。
また、外周部が回転する構造のため、作業者や周辺部品との接触を防ぐ安全対策も重要です。ガードやカバーの設置に加え、配線やセンサーとの干渉、回転部を含めた設置スペースも確認しましょう。
防塵・防滴が必要な環境では、保護構造や冷却方法まで考慮する必要があります。
インナーロータ・アウターロータの主な用途

インナーロータとアウターロータは、求める回転特性や設置条件に応じて使い分けられます。主な用途の目安は以下のとおりです。
| 重視する条件 | 適した構造の目安 | 用途例 |
| 素早い加速・減速 | インナーロータ | サーボ、位置決め機構、搬送機構 |
| 頻繁な速度変更 | インナーロータ | 可変速ファン、ポンプ、アクチュエータ |
| 高速回転 | インナーロータ | ファン、ブロワ、スピンドルなど |
| 大きなトルク | アウターロータ | 低速駆動、ダイレクトドライブなど |
| 定速回転 | アウターロータ | 送風機、一定速駆動機構など |
| 軸方向の薄型化 | アウターロータ | 扁平型駆動部、薄型機器 |
※表は構造上の一般的な傾向です。実際の選定では、トルクや回転数、寸法、冷却条件なども確認する必要があります。
インナーロータは応答性や加減速性能、アウターロータはトルクや急激な回転速度の変化を抑えたい用途に適した傾向があります。代表的な用途を詳しく見ていきましょう。
インナーロータが適している用途
インナーロータは、素早い起動・停止や速度変更が求められる機器に適しています。ロータの慣性モーメントを小さくしやすく、回転速度の変化に素早く対応できる点が強みです。
代表例として、サーボモータを用いた位置決め機構やアクチュエータ、搬送機構などが挙げられます。また、高速回転や可変速運転との相性もよく、ファン、ポンプ、ブロワなどでも選択肢となります。
必要な回転数やトルクは用途によって異なるため、採用にあたっては個別製品の仕様を確認することが重要です。
アウターロータが適している用途
大きなトルクや安定した回転を重視する機器では、アウターロータが有力な選択肢です。ロータ半径を大きく確保しやすく、大きなトルクを得やすいほか、急激な回転速度の変化を抑えやすい特徴があります。
主な用途は、ファンや送風機、低速で大きなトルクを必要とするダイレクトドライブ機構などです。薄型に設計しやすいため、軸方向のスペースが限られる機器にも採用できます。
選定時にはトルクだけでなく、加減速性能や外径、冷却条件、安全性なども確認しましょう。
インナーロータとアウターロータはどちらを選ぶ?

インナーロータとアウターロータは、どちらか一方が常に優れているわけではありません。必要な回転数やトルク、加減速の頻度、設置スペースなど、用途に求める条件によって適した構造が変わります。
主な選定基準を整理すると、以下のとおりです。
| 重視する条件 | 検討しやすい構造 | 主な確認ポイント |
| 高速回転・頻繁な加減速 | インナーロータ | 回転数、慣性モーメント、トルク |
| 大きなトルク | アウターロータ | 定格・最大トルク、外径、冷却 |
| 回転の安定性 | アウターロータ | 回転変動、負荷変動、制御方式 |
| 軸方向の薄型化 | アウターロータ | 外径、回転部の干渉、安全性 |
| 放熱経路の確保 | 両形式を比較 | ステータ位置、取付面、冷却方法 |
| 大きな負荷慣性 | 両形式を比較 | 許容負荷慣性、加速トルク、安全率 |
※表は構造上の一般的な傾向です。実際の性能は、モータの設計や仕様、使用条件などによって異なります。
回転数や応答性を重視する場合はインナーロータ、大きなトルクや安定した回転を求める場合はアウターロータが主な候補です。ただし、ロータ形式だけで決めず、要求仕様を総合して判断する必要があります。
回転数・応答性を重視するならインナーロータを検討
頻繁な起動・停止や加減速、速度変更が必要な場合は、インナーロータが有力な選択肢です。ロータを小径にしやすく、慣性モーメントを抑えられるため、回転速度の変化に素早く対応できます。高速回転や可変速運転との相性もよく、短時間で動作を切り替える機器に適した構造といえるでしょう。
ただし、応答性だけで選ぶのは適切ではありません。定格トルクや瞬時最大トルク、負荷の慣性モーメントなども確認し、必要な性能を満たせる製品を選ぶことが重要です。
トルク・安定した回転を重視するならアウターロータを検討
大きなトルクや安定した回転を重視する場合は、アウターロータを検討します。ロータの回転半径を大きく確保しやすく、同程度の条件であれば大きなトルクを得やすい構造です。慣性モーメントも大きくなる傾向があり、負荷変動による急激な回転速度の変化を抑えたい用途でも候補となります。
ただし、急速な加減速や頻繁な速度変更では不利になる場合もあるため、応答性とのバランスが欠かせません。外径や冷却条件、回転部の安全性も含めて検討しましょう。
用途・要求仕様から総合的に判断する
最終的なモータ選定では、インナーロータかアウターロータかだけで判断せず、用途に必要な性能を整理することが重要です。ロータ形式はあくまで選定要素の一つであり、実際の性能は運転条件や負荷、冷却方法などにも左右されます。
選定時には、主に以下の項目を確認しましょう。
- 必要な回転数・トルク
- 起動・停止や加減速の頻度
- 負荷の慣性モーメント
- 連続運転・間欠運転などの運転条件
- 外形寸法・設置スペース
- 使用温度・冷却方法
- 定格トルク・瞬時最大トルク
複数の条件を照らし合わせ、用途や要求仕様を満たすモータを選定することが大切です。
まとめ

インナーロータとアウターロータは、ロータの配置によってトルクや応答性、回転の安定性、形状などに異なる特徴があります。一般的には、高速回転や頻繁な加減速ではインナーロータ、大きなトルクや安定した定速回転ではアウターロータが有力な選択肢です。
ただし、モータ選定では構造だけで判断せず、必要な回転数やトルク、負荷、設置スペース、冷却条件などを総合的に確認することが重要です。
タキロンシーアイでは、用途や要求仕様に応じたモータ選定をサポートしています。最適な製品選びや開発にお悩みの際は、お気軽にご相談ください。
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- 製品サイト:https://cik-ele.com/
- コアレスモータ:https://cik-ele.com/products/list/coreless_motor/
- ブラシレスモータ:https://cik-ele.com/products/list/brushless_motor/
- ギアードモータ:https://cik-ele.com/products/list/gearhead/
- エンコーダ:https://cik-ele.com/products/list/encoder/
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