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医療用ポンプのモータ選定|コアレスモータが適する理由

医療用ポンプのモータ選定|コアレスモータが適する理由

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医療現場で使われる輸液ポンプやインスリンポンプ、人工透析装置などの医療用ポンプでは、薬液や血液を正確に送り出すモータが不可欠です。わずかな流量の誤差が患者の安全に直結するため、モータには高い精度と信頼性が求められます。さらに、在宅医療の普及やポータブル機器の需要拡大に伴い、小型化・静音化・省電力化への要件も年々高まっています。一方で、小型化を進めるほど騒音や性能面でのトレードオフが生じやすく、モータの選定は医療機器全体の性能を左右する要素です。

本記事では、医療用ポンプに搭載されるモータの役割や求められる性能条件を整理した上で、コアレスモータが医療用ポンプに適している理由を解説します。モータ選定を検討中の開発エンジニアにとって、技術的な根拠を整理する参考になる内容です。

 
監修:タキロンシーアイ株式会社電子部品営業グループ

1919年の創業以来、プラスチック加工のリーディングカンパニーとして培った高度な技術力と知見に基づき、本記事を監修しています。当部では、超小型・高精度なマイクロモータの市場動向や最新技術を常に分析し、設計者や開発者の皆様へ付加価値の高い情報を提供することに注力しています。製品の特性を熟知した専門チームとして、正確かつ実用的なコンテンツの発信を通じて、お客様の課題解決と技術革新をサポートいたします。

 

医療用ポンプに使われるモータの役割と主な機器

医療用ポンプのモータ選定|コアレスモータが適する理由

医療用ポンプは、薬液・血液・栄養液・ホルモン・造影剤といった多種の流体を患者の体内へ正確に送り込むための機器群です。機器の種類は据置型の大型装置から患者が常時携帯する超小型機器まで幅広く、それぞれの用途に応じて、異なるタイプのモータが選定されています。各機器が求める精度・静音性・耐久性に合わせたモータ設計が、ポンプの性能を支える基盤となります。

このセクションで解説する内容

  •  輸液ポンプと透析装置を駆動するモータ
  •  インスリンポンプなどポータブル機器のモータ
  •  呼吸補助装置や循環器系機器のモータ

代表的な医療用ポンプの種類と、各機器においてモータが担う機能を整理します。

輸液ポンプと透析装置を駆動するモータ

輸液ポンプと透析装置は、病院で広く使用される代表的な医療用ポンプです。輸液ポンプには蠕動(ぜんどう)式とシリンジ式の2種類があり、それぞれモータの駆動方式が異なります。主な機器とモータの役割は以下のとおりです。

機器ポンプ方式モータの役割
輸液ポンプ(蠕動式ローラーでチューブを順に圧迫ローラーの回転駆動
シリンジポンププランジャーの押し出し定速での直線駆動
透析装置血液・透析液の循環循環ポンプの駆動

蠕動式輸液ポンプでは、ローラーがチューブを順に押しつぶして薬液を送り出す仕組みです。動作モードには、一定流速での連続運転と、短時間で一定量を投与するボーラスモードの2種類があり、いずれにも精密な速度制御が必要です。

透析装置では、血液中の老廃物を除去する工程で血液と透析液を安定して循環させる必要があり、流量の変動が患者の安全に直結します。いずれの機器でも、トルクリップルの少ない安定した回転がモータに求められる条件です。

インスリンポンプなどポータブル機器のモータ

 インスリンポンプなどのポータブル医療機器では、患者が日常的に身につけて使用するため、モータへの要件が据置型の機器とは異なります。インスリンポンプは糖尿病患者が常時携帯する超小型の投与機器であり、搭載されるモータの径は10mm以下が一般的です。さらに、5mm以下のモータ径で設計された事例も報告されています。

バッテリー駆動であるため、消費電力を極力抑えた効率の高い設計が必要です。電池寿命はモータの消費電流に左右されるため、わずかな効率差が機器の連続使用時間に影響を及ぼします。加えて、多段階の注入速度やボーラス投与に正確に対応できるモータと制御システムの組み合わせが求められます。在宅医療の普及に伴い、ポータブル機器の開発は加速しており、モータの小型化と省電力化への要求は今後さらに高まる見通しです。

 

呼吸補助装置や循環器系機器のモータ

 呼吸補助装置や循環器系の医療機器でも、ポンプの駆動源としてモータが搭載されています。呼吸補助装置に内蔵されるエアポンプは、気流の生成と制御を担う部品です。褥瘡(じょくそう)予防用エアマットレスや在宅向け呼吸サポート機器では、エアポンプが空気圧を安定して供給し続ける必要があり、モータには長時間稼働に耐える耐久性と、患者のそばで動作するための静音性が求められます。

循環器系の分野では、大動脈内バルーンポンプ(IABP)や心室補助装置(VAD)などの心臓補助装置に、真空圧や陽圧を供給するダイヤフラムポンプが使用されています。このダイヤフラムポンプの駆動源にはモータが搭載されており、静かで途切れのない安定動作が必要です。

モータの回転に乱れが生じた場合、患者の循環動態に影響を及ぼすおそれがあり、医療用ポンプの中でも特に高い信頼性が求められる用途です。

 

医療用ポンプのモータに求められる性能条件

医療用ポンプのモータ選定|コアレスモータが適する理由

医療用ポンプのモータには、産業用途とは異なる厳しい性能条件が課されています。産業機器やホビー用途のモータであれば、出力やコストを中心に選定するケースが多い一方、医療用ポンプでは患者の生命と安全に直結する駆動源として、複数の性能要件を同時に満たす設計が求められます。

このセクションで解説する内容

  •  静音性と低振動で患者の負担を軽減
  •  小型・省電力でポータブル機器に対応
  •  薬液の投与精度を左右する流量制御性能

患者の安全と快適性に直結する3つの性能条件を、それぞれ整理します。

静音性と低振動で患者の負担を軽減

医療用ポンプは病室のベッドサイドや在宅環境に設置されるため、駆動音を患者の知覚閾値以下に抑える静音設計が必要です。夜間の病室ではわずかなモータ音でも患者の睡眠を妨げる原因の一つとなります。ポンプ全体の騒音の中でもモータ駆動音が占める割合は大きく、モータ単体での低騒音化がポンプの静粛性につながります。

振動面でも同様の配慮が欠かせません。モータ由来の振動はポンプ筐体を介して増幅され、チューブや配管にも伝わります。特に鉄芯付きモータで発生するコギングトルクは、回転ムラと微細な振動の原因です。医療用ポンプではコギングを抑えた構造のモータが適しており、駆動に起因する振動や騒音が機器上で知覚されない水準まで低減される設計が求められます。患者の身体に直接触れる機器やベッドサイドで長時間稼働する機器では、低振動モータの採用が快適性の向上とストレス軽減に貢献します。

 

小型・省電力でポータブル機器に対応

 在宅医療の普及を背景に、ポータブル医療機器の開発が加速しています。従来は病院内の据置型が主流であった透析装置や呼吸補助装置にも、在宅向けの小型モデルが登場しています。以下は、ポータブル化が進む代表的な医療用ポンプとモータへの要求です。

機器用途モータへの主な要求
経腸栄養ポンプ栄養剤の持続投与小型・低消費電力
インスリンポンプインスリンの自動投与超小型(10mm以下)・高効率
圧迫療法ポンプ深部静脈血栓の予防安定動作・静音
創傷治療ポンプ陰圧閉鎖療法長時間駆動・省電力

バッテリー駆動のポータブル機器では、モータの電力効率が電池寿命を左右する一因です。経腸栄養ポンプの採用事例では、20mm前後のコアレスモータで小型化と駆動性能を両立する設計が進んでいます。ポータブル医療機器ではモータがポンプの性能・効率・寿命・コストに影響を与えるため、小型・省電力設計への対応力は、機器開発における重要な要件です。

 

薬液の投与精度を左右する流量制御性能

輸液ポンプや栄養ポンプでは、薬液の送り出し量にわずかな誤差が生じるだけでも患者の安全に影響を及ぼします。流量制御の精度に関わる要因の一つが、モータのトルクリップルです。トルクリップルが大きいモータでは回転速度にムラが生じ、ポンプの吐出量が脈動するため、投与量の正確性が損なわれます。低速回転時にも安定したトルクを維持できるモータの選定が、精密な流量制御の基盤となります。

長寿命設計も流量制御の信頼性に関わる要素です。連続で稼働する輸液ポンプや透析装置では、ブラシの摩耗や軸受の劣化がモータ特性の変化を引き起こし、流量精度の低下につながります。ブラシ付きモータではブラシの摩耗が、ブラシレスモータでは軸受の摩耗がそれぞれ寿命の主な制限要因です。使用環境や稼働時間に応じたモータタイプの選定が、長期にわたる安定した流量制御を支えます。

医療用ポンプにコアレスモータが選ばれる3つの理由

医療用ポンプのモータ選定|コアレスモータが適する理由

コアレスモータは、ロータに鉄芯を持たない構造を採用したモータです。この構造から生まれる特性が、医療用ポンプの厳しい性能条件と合致し、採用が広がっています。

このセクションで解説する内容

  •  コギングレスで精密な流量制御が可能
  •  低慣性ロータが高速応答を実現
  •  小型・省スペースでポータブル機器に適合

コアレスモータの構造的な特徴が、医療用ポンプの各性能要件にどのように応えるかを整理します。

コギングレスで精密な流量制御が可能

コギングレスの回転特性は、コアレスモータの最大の構造的利点です。従来の鉄芯付きモータでは、ロータの鉄芯と永久磁石の磁気的な引き合いによってコギングトルクが発生し、回転中に周期的なトルク変動が生じます。コアレスモータは鉄芯を持たない中空コイル構造を採用しているため、コギングトルクがほとんど発生しません。両者の違いは以下のとおりです。

項目鉄芯付きモータコアレスモータ
コギングトルク鉄芯と磁石の磁気干渉により発生鉄芯がなく、ほとんど発生しない
低速域の回転安定性トルクリップルで速度ムラが生じやすい滑らかな回転を維持
流量制御への影響吐出量の脈動が発生するおそれあり一定速度での安定した送液が可能

コアレスモータは鉄芯を持たない構造によりトルクリップルが小さく、低速回転時にも滑らかな送液を実現しやすい特性を持っています。流量のピーク変動を回避し、薬液や栄養液を一定速度で送り出す精密なポンプ制御に適した構造です。

 

低慣性ロータが高速応答を実現

低慣性ロータによる高速応答性は、コアレスモータが医療用ポンプに適する2つ目の理由です。コアレスモータの中空ロータは鉄芯がない分だけ質量が軽く、慣性モーメントが小さい構造となっています。慣性の小さいロータは通電後すぐに目標回転数に到達し、停止指令に対しても瞬時に減速・停止できます。

この高速応答性は、ボーラス投与のような間欠的なオンデマンド動作と相性がよい特性です。ボーラスモードでは短時間で一定量の薬液を投与した後、すぐにモータを停止させる必要があり、起動・停止の応答が遅いモータでは投与量に誤差が生じやすいのが課題です。コアレスモータは瞬時の起動・停止により、オンデマンド動作での投与精度を高めます。

 

小型・省スペースでポータブル機器に適合

小型・省スペースで設計できる点は、コアレスモータがポータブル医療機器に適する3つ目の理由です。コアレスモータは鉄芯を持たない構造により、同等出力の鉄芯付きモータと比較してモータ本体をコンパクトに設計できます。鉄芯の体積と質量がない分、限られたスペースでもより高いパワー密度を実現する設計が可能です。

【コアレスモータがポータブル医療機器にもたらす設計上の利点】

  • 鉄芯を持たない構造により回転子慣性が小さく、高応答かつ精密な制御が可能
  • コギングが発生しないため、低振動で滑らかなトルク特性を有し、流量制御や位置決め精度の向上に寄与
  • 短時間高出力に優れ、間欠駆動や高応答が求められる用途において高い動的性能を発揮
  • 小型・軽量化はすべての条件で成立するものではないが、応答性や間欠駆動性能が支配的な用途においてはコアレスモータの特性を活かすことで、必要性能をよりコンパクトな構成で実現できる。

タキロンシーアイでは外径4mm~22mmまでのコアレスモータをラインアップしており、用途や搭載スペースに応じた設計が可能です。このコアレス構造の特性により、制限のある狭スペースに搭載する用途から中型機器まで、幅広いポータブル医療用ポンプの小型化を支えます。

まとめ

医療用ポンプのモータ選定|コアレスモータが適する理由

医療用ポンプには輸液ポンプ、インスリンポンプ、透析装置、呼吸補助装置、循環器系装置など多くの種類があり、いずれの機器でも薬液や血液を正確に送り出すモータが不可欠です。モータには静音性・低振動・小型化・省電力・高精度な流量制御・長寿命といった厳しい性能条件が課されており、モータの選定が医療機器全体の性能を左右します。

コアレスモータは鉄芯を持たない構造により、コギングレスの滑らかな回転、低慣性ロータによる高速応答と省電力、そして小型・コンパクトな設計を同時に実現できます。医療用ポンプが求める精密な流量制御やポータブル機器への搭載といった要件に対し、構造的な優位性を持つ選択肢です。

 

製品情報・お問い合わせ

タキロンシーアイのマイクロモータ製品については、以下のウェブサイトで詳細をご覧いただけます。

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