製造装置や産業機器において、モータの動力を従動軸へ正確に伝えるにはカップリング(軸継手)が用いられます。カップリングは駆動軸と従動軸を連結し、取付誤差の吸収や振動の緩和といった役割を果たす機械要素部品です。
ただし、カップリングにはジョータイプやディスクタイプ、ベローズタイプなど複数の種類があり、用途や求める特性に応じた選定が必要です。
本記事では、カップリングの基本的な役割から主な種類と特徴、選定時のポイントまでを体系的に解説します。また、カップリングの性能を最大限に引き出すために知っておきたい、モータとの組み合わせについてもまとめています。
| 監修:タキロンシーアイ株式会社電子部品営業グループ 1919年の創業以来、プラスチック加工のリーディングカンパニーとして培った高度な技術力と知見に基づき、本記事を監修しています。当部では、超小型・高精度なマイクロモータの市場動向や最新技術を常に分析し、設計者や開発者の皆様へ付加価値の高い情報を提供することに注力しています。製品の特性を熟知した専門チームとして、正確かつ実用的なコンテンツの発信を通じて、お客様の課題解決と技術革新をサポートいたします。 |
カップリングの基本と4つの役割
カップリングとは、モータなどの駆動軸(回す側)とポンプやボールねじなどの従動軸(回される側)を連結し、動力を伝達する機械要素部品です。「軸継手」や「ジョイント」とも呼ばれる機械の軸連結専用の部品です。
カップリングには動力伝達のほかに、取付誤差の吸収、振動の緩和、熱の遮断といった機能があります。それぞれの役割を理解することで、装置設計における選定の判断基準が明確になります。
このセクションで解説する内容
- 駆動軸と従動軸をつなぎ動力を伝達する
- 3種類のミスアライメントを吸収する
- 振動の緩和と熱の遮断を担う
動力伝達・ミスアライメント吸収・振動緩和・熱遮断の各役割を正しく理解すると、装置設計におけるカップリング選定の判断基準が明確になります。
駆動軸と従動軸をつなぎ動力を伝達する
駆動軸と従動軸をつなぎ動力を伝達する機能は、カップリングのもっとも基本的な役割です。モータの出力軸とボールねじやポンプなどの従動軸を連結し、回転動力を正確に伝えます。
仮に軸を一体化した構造で機械を製作する場合、加工精度やコストの面で困難になるだけでなく、運搬や組み付けにも余計な工数が発生し、駆動側・従動側のどちらかが破損すると全体を交換しなければならず、メンテナンスの負担が増加します。
カップリングを介して連結すれば、太さの異なる軸同士でも動力の伝達が可能です。破損時には該当部品のみの交換で対応でき、軸連結と保守を考慮した構成をとることができます。
3種類のミスアライメントを吸収する
3種類のミスアライメントを吸収する機能も、カップリングが果たす役割の一つです。ミスアライメントとは、駆動軸と従動軸の軸心のずれを指します。主な種類は以下のとおりです。
| 種類 | 内容 |
| 偏心(平行ずれ) | 2軸の軸心が平行にずれた状態 |
| 偏心(平行ずれ) | 2軸の軸心が角度を持って傾いた状態 |
| エンドプレイ(軸方向ずれ) | 2軸が軸方向に離れたり近づいたりする状態 |
ミスアライメントを放置すると、振動や騒音、軸受の偏摩耗など装置トラブルを引き起こす要因になります。
各部品には加工精度の個体差があり、すべての軸を完全に一致させて組み立てる作業は現実的に困難です。カップリングは弾性体や金属ばねの変形を利用し、3種類のずれを許容範囲内で吸収して周辺部品への負荷を軽減します。
振動の緩和と熱の遮断を担う
振動の緩和と熱の遮断を担う点も、カップリングが備える大切な機能です。モータの回転時に発生する振動がボールねじなど従動側の機器に伝わると、位置決め精度の低下や機械性能の劣化を招きます。カップリングは駆動側の振動を吸収し、従動側の精度を維持する緩衝材として機能します。
加えて、モータの稼働中に発生する熱にも注意が必要です。熱が従動軸側にそのまま伝わると、ボールねじなどの部品が熱膨張を起こし、寸法精度に影響を及ぼすおそれがあります。カップリングは駆動側と従動側の間で熱の伝達を抑え、部品の変形や位置ずれを防ぎます。
振動緩和と熱遮断の両機能は、装置全体の精度維持と周辺部品への負荷に関わり、寿命延長につながる要素です。
カップリングの主な種類と特徴

カップリングは構造の違いによって複数の種類に分類されます。種類ごとにねじり剛性や振動吸収性、対応可能なミスアライメント量が異なるため、各タイプの特性を把握した上で選定を進める必要があります。
このセクションで解説する内容
- 固定軸継手とたわみ軸継手の違い
- ディスク・スリット・ベローズタイプの特徴
- ジョータイプとゴムタイプの特徴
各タイプの構造と得意分野を把握すれば、装置の要件に合ったカップリングを効率よく絞り込めます。
固定軸継手とたわみ軸継手の違い
固定軸継手とたわみ軸継手の違いを理解する点が、カップリング選定の出発点です。両者の主な特徴を以下の表で比較します。
| 項目 | 固定軸継手(リジッド) | たわみ軸継手(フレキシブル) |
| 構造 | 2軸を堅固に一体化 | 弾性体や金属ばねを介して連結 |
| ミスアライメント吸収 | 対応不可 | 偏心・偏角・エンドプレイに対応 |
| ねじり剛性 | 極めて高い | タイプにより異なる |
| コスト | 比較的安価 | 構造により幅がある |
| 適した環境 | 軸心ずれがほぼない条件 | 取付誤差や熱膨張がある条件 |
固定軸継手はフレキシブル性を持たないため、取付誤差の吸収には対応せず、軸心ずれが小さい条件で用いられます。固定軸継手は、シンプルな構造と高ねじり剛性を重視する場合の選択肢です。
たわみ軸継手は、弾性体や金属ばねのたわみを利用してミスアライメントを吸収しながら動力を伝達します。設計条件に合わせた使い分けが装置性能を左右します。
ディスク・スリット・ベローズタイプの特徴
ディスク・スリット・ベローズタイプは、金属の弾性変形を利用してミスアライメントを吸収する金属ばね系カップリングです。各タイプの構造と特徴は以下のとおりです。
| タイプ | 構造の特徴 | 主な強み |
| ディスク | 金属薄板のたわみで軸心ずれを吸収 | ねじり剛性が高く、回転伝達誤差が小さい |
| スリット | 円筒材に螺旋状のスリットを加工した一体構造 | 小型・低慣性でシンプルな設計 |
| ベローズ | 金属ベローズの伸縮で3方向のずれに対応 | 回転等速性に優れ、エンコーダ接続に最適 |
ディスクタイプ、金属スリットタイプ、ベローズタイプにはノーバックラッシの製品があり、用途に応じてサーボモータ、ステッピングモータ、エンコーダ接続などに選定されます。ディスクタイプや金属スリットタイプには、耐油性の項目で適合とされる製品があります。
ジョータイプとゴムタイプの特徴
ジョータイプとゴムタイプは、ゴムやウレタンなどの弾性素材を中間部品に組み込んだ弾性系カップリングです。ジョータイプは2個の金属ハブの間にエラストマ(弾性体)を挟んだ構造で、衝撃や振動の吸収性能に優れています。取り付けが簡単な点は、ジョータイプの特徴の一つです。
【弾性系カップリングの主な用途】
- ポンプやコンベヤなどの動力伝達
- 衝撃荷重が発生する装置の振動低減
- サーボモータのハンチング抑制
高減衰能ゴムを用いたカップリングには、サーボモータのハンチングを抑制し、より高いゲイン設定を可能にする製品があります。高減衰能ゴムを用いたカップリングは振動吸収特性に優れる一方で、ねじり剛性や許容ミスアライメントは製品ごとに異なります。
振動や衝撃の影響を受ける装置では、弾性系カップリングが有力な選択肢です。
カップリング選定の基本手順とモータとの関係

カップリングの選定は、モータや用途に応じたタイプの選定から始め、サイズ選定、許容トルクや許容ミスアライメントなどの仕様確認、軸の締結方法の確認へと段階的に進めます。加えて、組み合わせるモータの種類や特性も選定結果に影響を及ぼす要素です。
ここでは、選定の実務的な手順とモータとの関係を解説します。
このセクションで解説する内容
- 用途に合わせたタイプの絞り込み方
- 許容トルクとミスアライメント許容値の確認方法
- モータの特性がカップリング選定に与える影響
選定の各段階で確認すべきポイントを押さえることで、用途や使用条件に合ったカップリングを選定しやすくなります。
用途に合わせたタイプの絞り込み方
用途に合わせたタイプの絞り込みが、カップリング選定における最初のステップです。カップリングの種類は、モータの種類や使用用途に応じて選定します。
| 用途分類 | 求められる性能 | 適したタイプ例 |
| モーションコントロール(位置決め制御) | バックラッシゼロ 高ねじり剛性 | ディスク・スリット |
| パワートランスミッション(動力伝達) | 高トルク伝達 衝撃吸収 許容ミスアライメント | ジョー・オルダム |
モーションコントロール用途では、回転方向のガタつきが位置決め精度を損なうため、バックラッシゼロのタイプから選ぶ必要があります。一方、動力伝達を重視する用途では、必要トルクを満たし、許容トルクを確認できるカップリングを選定することが重要です。
タイプを絞り込んだ後は、補正トルクが許容トルク以下となるサイズの選定、軸穴径の確認、締結方法の選定、寸法の最終確認へと進みます。これらの項目を順に照合することで、候補を絞り込みやすくなります。
許容トルクとミスアライメント許容値の確認方法
許容トルクとミスアライメント許容値の確認は、カップリングのサイズを決定する段階で取り組むステップです。
【サイズ選定の確認手順】
- モータの最大トルクに補正係数を乗じた補正トルクの算出
- 補正トルクがカップリングの許容トルク以下となるサイズの選定
- 偏心・偏角・エンドプレイの各ミスアライメントが許容値内に収まるかの検証
ミスアライメントが許容値を超えると、振動が発生したりカップリングの寿命が急速に低下したりするおそれがあります。
特に注意すべき点として、偏心と偏角など2種類以上のミスアライメントが同時に発生する場合は、それぞれの許容値が単独時の1/2に制限されるのが一般的です。実際の据え付け環境では複合的なずれが生じるケースが多いため、許容値の1/3以下にする設計が目安です。
スペース・軸穴径・締結方法の確認も併せて、装置に適したサイズを決定してください。
モータの特性がカップリング選定に与える影響
モータの特性がカップリング選定に与える影響は、装置全体の性能を左右する見逃せない要素です。制御モータ(サーボモータなど)と組み合わせる場合、ねじり剛性が低いカップリングを使用するとモータ側と負荷側の回転角度にずれが生じ、位置決め精度を損なうおそれがあります。一方、振動を抑えたい用途では、振動吸収性に優れ共振を起こしにくいカップリングが適した選択です。
モータの種類によって、適したカップリングの特性は異なります。高速・高精度な位置決め制御を求める用途では、バックラッシゼロで高剛性のディスクタイプやスリットタイプが有力です。振動吸収を優先する用途では、高減衰能ゴムタイプを採用すればシステムの共振を防ぎつつモータ性能を引き出せます。汎用モータでは一方向の連続回転が中心となるため、ミスアライメント許容量が大きいオルダムタイプやジョータイプが主な選択肢です。
加えて、モータ自体が持つ振動特性や回転精度もカップリングへの負荷に直結します。例えば、コギング(回転ムラ)の少ないモータを採用すれば、カップリングにかかる不規則な力が減り、装置全体の安定性が向上します。カップリング選定では、カタログに記載された許容トルクやミスアライメント許容値に加え、駆動源となるモータの品質も併せて検討する視点が不可欠です。
まとめ

カップリング(軸継手)は、駆動軸と従動軸を連結して動力を伝達する機械要素部品です。動力伝達に加え、取付誤差(ミスアライメント)の吸収、振動・衝撃の吸収、モータなどの熱を従動側に伝えにくくする役割があります。
カップリングには、ディスクタイプ、ジョータイプ、オルダムタイプ、ベローズタイプ、リジッド形などがあります。選定にあたっては、用途とモータの種類に応じてタイプを絞り込み、補正トルクが許容トルク以下となることや、偏心・偏角・エンドプレイなどの許容値を確認してください。
また、カップリング選定では、組み合わせるモータの種類や使用条件も確認が必要です。モータとカップリングの組み合わせを検討する際は、必要な位置決め精度や振動吸収性に応じて、カップリングの種類を選定しましょう。小型で高精度なモータをお探しの方は、タキロンシーアイの製品サイトをご確認ください。
製品情報・お問い合わせ
タキロンシーアイのマイクロモータ製品については、以下のウェブサイトで詳細をご覧いただけます。
- 製品サイト:https://cik-ele.com/
- コアレスモータ:https://cik-ele.com/products/list/coreless_motor/
- ブラシレスモータ:https://cik-ele.com/products/list/brushless_motor/
- ギアードモータ:https://cik-ele.com/products/list/gearhead/
- エンコーダ:https://cik-ele.com/products/list/encoder/
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