製品の小型化・高性能化が求められる現代において、小型モータは医療機器や産業機器、光学機器など幅広い分野で採用されています。しかし、小型モータには多くの種類があり、それぞれ特性が異なるため、最適なモータの選定は容易ではありません。
本記事では、小型モータの定義や分類を整理し、用途別の活用事例を紹介します。さらに、選定時に確認すべきスペックや採用メリットについても解説し、技術者の方が自社要件に最適な小型モータを見つけるための実践的な知識をお届けします。
| 監修:タキロンシーアイ株式会社電子部品営業グループ 1919年の創業以来、プラスチック加工のリーディングカンパニーとして培った高度な技術力と知見に基づき、本記事を監修しています。当部では、超小型・高精度なマイクロモータの市場動向や最新技術を常に分析し、設計者や開発者の皆様へ付加価値の高い情報を提供することに注力しています。製品の特性を熟知した専門チームとして、正確かつ実用的なコンテンツの発信を通じて、お客様の課題解決と技術革新をサポートいたします。 |
小型モータの定義と主な種類

小型モータは一般的に出力100W以下を指し、そのうち3W以下はマイクロモータ(超小型モータ)と呼ばれます。電源は直流(DC)と交流(AC)に分類され、構造もブラシ付き・ブラシレス、コアレス、ステッピングなど多岐にわたります。
本章で取り上げるのは、小型モータの基本的な定義と、技術者が押さえるべき主要な分類・種類です。
このセクションで解説する内容
- 小型モータの定義と出力による分類
- 電源による分類:DCモータとACモータ
- 構造による主要な種類:コアレス・ブラシレス・ステッピング
それぞれの分類基準を理解することで、自社製品に適したモータの候補を効率的に絞り込めます。
小型モータの定義と出力による分類
小型モータは出力100W以下のモータを指します。75W以下とする定義もあり、業界や文献によって基準は若干異なります。特に3W以下のモータはマイクロモータと呼ばれ、乾電池程度の電力でも駆動可能です。
近年は技術の進歩により、小型サイズで100Wを超える高出力を実現する製品や、φ4mm以下の極小径モータも登場しています。そのため、出力値だけでなく、外径・長さなどの物理的寸法も含めて「小型」の定義を捉える必要があります。
電源による分類:DCモータとACモータ
モータは電源の種類により直流(DC)モータと交流(AC)モータに分類されます。小型モータではDCモータが多く採用される傾向があります。低電圧駆動が可能でバッテリー駆動機器との相性がよく、精密な速度制御にも適した特性を持つためです。
DCモータはブラシ付きとブラシレスに分かれます。ブラシ付きタイプは構造がシンプルで制御が容易ですが、ブラシ摩耗による寿命制限が課題です。ブラシレスタイプはブラシがないため長寿命で、メンテナンス頻度を低減できます。
構造による主要な種類:コアレス・ブラシレス・ステッピング
DCモータの中でも、構造の違いにより特性が大きく異なります。代表的な3種類の特徴を以下の表に整理します。
| 種類 | 構造的特徴 | 主なメリット | 適用分野例 |
| コアレスモータ | 鉄芯を持たない巻線構造 | コギングレスで滑らかな回転 高応答性 | 医療機器 光学機器 精密制御 |
| ブラシレスDCモータ | ブラシと整流子を排除した構造 | 長寿命 低ノイズ 高効率 | 産業機器 セキュリティ機器 |
| ステッピングモータ | パルス信号で角度制御する構造 | 高い位置決め精度 オープンループ制御が可能 | 位置決め装置 プリンタ |
コアレスモータは鉄芯がないためコギングトルク(回転ムラ)がほとんど発生せず、滑らかな回転と高速応答性を実現します。ブラシレスDCモータはブラシ摩耗がなく長寿命です。ステッピングモータは位置決め精度に優れ、フィードバック制御なしでも正確な角度制御が可能です。
用途別に見る小型モータの活用事例

小型モータは医療機器、産業機器、光学機器、セキュリティ機器、ホビー製品など多くの分野で採用されています。各分野で求められる性能は異なります。
医療分野では高い信頼性とコギングレスな滑らかな動作、光学分野では高速応答性と低振動、セキュリティ分野では低電圧起動と長寿命が主な要件です。本章では、用途別の活用事例と技術的要件を具体例とともに解説します。
このセクションで解説する内容
- 医療機器分野での活用:高精度と信頼性が求められる現場
- 光学機器分野での活用:高速応答と低振動が鍵
- 産業機器・工具分野での活用:小型・軽量・高効率を実現
- セキュリティ機器分野での活用:低電圧起動と長寿命
- ホビー・コンシューマ製品での活用:高性能化と耐久性向上
各分野の具体的な事例を通じて、小型モータに求められる技術特性を理解していきます。
医療機器分野での活用:高精度と信頼性が求められる現場
医療機器では患者の安全が最優先であり、モータには高い信頼性と精密な制御が求められます。コアレスモータは以下の医療機器で採用されています。
【主な採用機器】
- 内視鏡(先端部の屈曲制御)
- 外科手術用ロボット(精密な動作制御)
- 人工透析装置(血液ポンプ駆動)
- 輸液ポンプ(薬液の定量送液)
- インスリンポンプ(微量投与制御)
- 歯科根管治療機器(根管治療器具の回転駆動)
コアレスモータはコギングレスで滑らかな回転を実現するため、微細な振動や回転ムラを嫌う医療現場の要求に応えられます。また、高応答性により素早い起動・停止が可能で、緊急時の対応にも適しています。医療機器の開発においては、モータの品質管理体制や長期的な供給安定性も選定基準として考慮が必要です。
光学機器分野での活用:高速応答と低振動が鍵
各種カメラのレンズ駆動には、高速かつ正確な位置決めが求められます。コアレスモータはコギングトルクがほとんど発生せず、レンズ駆動時の微振動を抑制可能です。映像ブレやピントずれの原因となる回転ムラを排除し、高画質な撮影を実現します。
主な適用箇所はオートフォーカス機構、手ブレ補正機構、絞り調整機構などです。コアレスモータは慣性モーメントが小さく、素早い起動・停止・反転が可能なため、被写体追従にも適しています
産業機器・工具分野での活用:小型・軽量・高効率を実現
産業用電動工具やハンディタイプの機器では、小型でありながら高トルクを発揮するモータが求められます。コアレスモータは鉄芯がないため小型化が可能で、作業者の負担軽減に貢献します。
| 要求特性 | コアレスモータの対応 | 製品へのメリット |
| 小型化 | 鉄芯レス構造による小型設計 | 製品小型化への貢献 |
| 省電力 | 高効率駆動で消費電流を抑制 | バッテリー駆動時間の延長 |
| 低振動 | コギングレスで安定した回転 | 作業精度の向上 |
| 耐久性 | 衝撃に強い構造 | 過酷な現場環境の対応 |
バッテリー駆動の電動工具では、消費電力の低減がバッテリー寿命に直結します。コアレスモータは効率的に動作するため、1回の充電でより長時間の使用が可能です。また、振動が少ないことで作業の安定性が向上し、製品品質の向上にもつながります。
セキュリティ機器分野での活用:低電圧起動と長寿命
電子錠やスマートロックなど電池駆動のセキュリティ機器では、省電力と長寿命がもっとも重視されます。限られた電池容量で長期間動作させるには、低電圧でも確実に起動するモータが必要です。
マイクロモータの中には最低1.0Vという極めて低い電圧で起動可能な製品があり、電池残量が少ない状態でも安定した動作を維持します。低電圧駆動性と長寿命を両立することで、以下のメリットが得られます。
【セキュリティ機器での採用メリット】
- 電池交換頻度の低減(ユーザー利便性向上)
- 頻繁な施解錠動作に対する耐久性確保
- 低消費電流による長期間の安定稼働
- 小型設計によるドア錠内部への組み込み容易性
セキュリティ機器は故障が許されない用途のため、モータの信頼性と品質管理体制が採用判断の決定要因となります。
ホビー・コンシューマ製品での活用:高性能化と耐久性向上
ラジコンや電動自転車ユニット、美容家電などでは、製品差別化のため高性能かつ長寿命なモータが求められます。コア部品であるモータの品質が製品全体の評価を左右するため、選定は慎重に進める必要があります。
小型で低振動、長寿命のコアレスモータを採用することで、ユーザー満足度の高い製品開発が可能です。ラジコン用サーボモータでは微振動の少なさが制御精度向上に直結し、美容家電では低振動特性が静音性を高めます。
小型モータの選定ポイントと採用メリット

最適な小型モータを選定するには、サイズ・トルク・回転数・電圧などのスペック確認はもちろん、使用環境や用途に応じた特性の見極めが必要です。
本章では、モータ選定時に確認すべき主要なスペック項目と、コアレスモータをはじめとする小型モータを採用するメリット(製品の小型化・軽量化、省電力化、振動・騒音の低減、長寿命化など)を整理します。
このセクションで解説する内容
- モータ選定時に確認すべき主要スペック
- コアレスモータ採用による5つのメリット
- 開発段階からのメーカー連携がもたらす価値
適切な選定プロセスを経ることで、製品の競争力向上と開発リスクの低減を同時に実現できます。
モータ選定時に確認すべき主要スペック
モータ選定では、製品要件に合致するスペックを漏れなく確認する必要があります。主要な確認項目は以下のとおりです。
| 確認項目 | 内容 | 選定時の注意点 |
| サイズ(直径・長さ) | 搭載スペースに収まる寸法 | 取付方法や周辺部品との干渉も考慮 |
| 電圧(定格電圧) | 駆動電源に適合する電圧 | 低電圧起動が必要な場合は最低起動電圧も確認 |
| トルク(起動・定格) | 負荷を駆動するのに必要な回転力 | 安全率を見込んだ余裕のある選定が必要 |
| 回転数(無負荷・定格) | 用途に適した回転速度 | 減速ギアとの組み合わせも検討 |
| 使用環境 | 温度・湿度・防爆要件など | 特殊環境では専用仕様が必要な場合あり |
| オプション | ギアヘッド付き、エンコーダ付き | 位置制御や減速が必要な用途で検討 |
これらの要件を事前に整理することで、最適なモータ候補を効率的に絞り込めます。特に使用環境については、温度範囲や耐衝撃性、防じん・防水性能など、製品の使用条件を詳細に把握することが必要です。
ブラシ付きモータとブラシレスモータ
DCモータは、電流の切り替え方式によってブラシ付きとブラシレスに分類されます。
| 項目 | ブラシ付きモータ | ブラシレスモータ |
| 電流切り替え方式 | ブラシと整流子による機械的切り替え | 電子回路による電気的切り替え |
| 制御方式 | シンプル(電圧制御のみ) | 電子制御が必要 |
| 寿命 | ブラシ摩耗により短い | 摩耗部品がなく長寿命 |
| メンテナンス | 定期的なブラシ交換が必要 | メンテナンスフリー |
| 効率 | やや低い(摩擦損失) | 高効率 |
| ノイズ | 電気ノイズが発生 | 電気ノイズが少ない |
| コスト | 低コスト | やや高コスト |
ブラシ付きモータは制御がシンプルで低コストですが、ブラシの摩耗により寿命が限られます。ブラシレスモータは長寿命で高効率ですが、電子制御回路が必要です。用途に応じて、メンテナンス性や寿命、ノイズ特性などを考慮して選定します。
コアレスモータ採用による5つのメリット
コアレスモータを採用することで、製品開発において以下の5つのメリットが得られます。
【コアレスモータの5つのメリット】
- コギングレスによる滑らかな回転と低振動
- 高速応答性による素早い起動・停止・反転
- 小型設計による製品の設計自由度向上
- 低消費電力による省エネ・バッテリー寿命延長
- 長寿命による信頼性向上とメンテナンス頻度低減
これらの特長は製品の競争力向上に直結します。コギングレス特性は医療機器や光学機器で有効です。高速応答性はカメラや産業機器に適し、小型化は設計自由度を高めます。
開発段階からのメーカー連携がもたらす価値
最適なモータ選定には、開発初期段階からメーカーと技術相談を進める方法が有効です。要件が固まっていない段階でも、用途や使用環境を共有することで、最適なソリューション提案を受けられます。
メーカーとの連携で得られる価値は多岐にわたります。まず、カタログ製品だけでなく、用途に応じたカスタマイズ対応の可能性が広がる点が挙げられます。サンプル提供を通じた実機評価により、採用リスクを低減できるのもメリットです。
まとめ

小型モータは出力100W以下を指し、医療・産業・光学・セキュリティ・ホビーなど幅広い分野で活用されています。用途により求められる特性は異なり、医療分野ではコギングレスと高精度、光学分野では高速応答と低振動、セキュリティ分野では低電圧起動と長寿命が主な要件です。
モータ選定では、スペック確認に加え、開発段階からメーカーと連携してサンプル評価を経る方法が有効です。コアレスモータの採用により、製品の小型化・高性能化・省電力化・長寿命化を実現できます。製品開発でお悩みの際は、専門メーカーへお問い合わせください。
製品情報・お問い合わせ
タキロンシーアイのマイクロモータ製品については、以下のウェブサイトで詳細をご覧いただけます。
- 製品サイト:https://cik-ele.com/
- コアレスモータ:https://cik-ele.com/products/list/coreless_motor/
- ブラシレスモータ:https://cik-ele.com/products/list/brushless_motor/
- ギアードモータ:https://cik-ele.com/products/list/gearhead/
- エンコーダ:https://cik-ele.com/products/list/encoder/
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- お問い合わせ:https://cik-ele.com/contact/







