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ブラシモータとは?構造・原理から特性まで徹底解説

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産業機器や医療機器、セキュリティ機器など、幅広い分野で採用されているブラシモータ。シンプルな構造と制御の容易さから、多くの製品開発エンジニアに選ばれています。

一方で、「ブラシモータの動作原理を正確に理解したい」「自社製品に最適なモータを選定したい」「ブラシレスモータとの違いを明確に把握したい」といったニーズをお持ちの技術者も少なくありません。

本記事では、ブラシモータの基本構造から回転原理、発電原理、そして実用上の特性まで、技術者視点で網羅的に解説します。新人エンジニアから熟練技術者まで、製品開発に役立つ選定ポイントもご紹介しますので、最後までご覧ください。

 

ブラシモータの基本構造と動作原理

ブラシモータは、直流電源で駆動できるシンプルな構造のモータです。

ブラシモータは、ローター(回転子)、ステーター(固定子)、ブラシ、整流子(コンミュテータ)という4つの主要部品で構成されています。直流電源から供給された電流がブラシを通じて整流子に伝わり、ローター巻線に流れることでフレミングの左手の法則に基づいた回転力が発生する仕組みです。

ブラシと整流子の機械的接触により、ローター回転に応じて機械的に電流方向が切り替わる「整流作用」が働き、連続回転が実現されます。この仕組みにより、外部制御回路なしで直流電源に直結するだけで駆動できるシンプルさが最大の特長です。

このセクションで解説する内容

  • ローター(回転子)と巻線の役割
  • ブラシと整流子による整流作用
  • フレミングの左手の法則と回転原理

基本的な構造と原理から、まずは理解していきましょう。

 

ローター(回転子)と巻線の役割

一部のブラシモータはローターが回転軸に固定された巻線コイルと鉄芯で構成され、電流が流れることで磁界が生成されます。生成された磁界とステーターの永久磁石(または電磁石)との相互作用により回転トルクが発生し、連続的な回転運動に変換される仕組みです。ローターの鉄芯は電磁鋼板を積層した構造が一般的で、磁気効率を高めながら渦電流損失を抑える設計となっています。

巻線の設計や極数により、トルク特性や回転速度が決定されるため、用途に応じた最適化が必要です。例えば、巻線の線径を太くすると抵抗が下がり電流を多く流せるため、高トルク化しやすい一方、同じスペースでは巻数が減るため、速度定数(Kv)が上がり高速回転寄りの特性になります。

反対に、細い線で多くの巻数を確保すると抵抗が増えて流れる電流は小さくなりますが、巻数が増えることでトルク係数(Kt)が大きくなり、低速域で力強いトルクを得やすい特性になります。
このように、巻線の線径と巻数の組み合わせによって、トルク性能と回転速度のバランスを調整することが可能です。

医療機器や光学機器では高精度な回転制御が求められるため、巻線設計は製品性能を左右する要素となります。産業用工具では高トルクが優先され、セキュリティ機器では省電力性が重視されるなど、用途ごとに最適な巻線設計が求められます。

 

ブラシと整流子による整流作用

ブラシは固定された導電性部品で、回転する整流子(コンミュテータ)に接触しながら電流を供給します。ブラシの材質には、カーボンや貴金属合金が用いられ、導電性と耐摩耗性のバランスが重視されています。整流子は複数のセグメントに分割された円筒形の部品で、ローターの回転角度に応じてブラシとの接点が切り替わることで、巻線に流れる電流方向が機械的に切り替わる仕組みです。

セグメント数が多いほど滑らかな整流が実現され、トルクリップル(回転ムラ)が低減されます。ローターが回転すると、ブラシは次々とセグメントを切り替えながら適切なタイミングで電流方向を切り替え、常に同一方向の回転力を生み出します。この機械的整流により、外部制御なしで安定した連続回転が可能です。

整流子とブラシの接触により、シンプルな構造でありながら確実な動作を実現している点が、ブラシモータの信頼性を支えています。産業機器やセキュリティ機器など、長年にわたり多様な分野で採用されてきた実績は、この整流機構の確かさを証明するものです。

 

フレミングの左手の法則と回転原理

ブラシモータの回転原理は、フレミングの左手の法則に基づいています。この法則では、左手の親指・人差し指・中指をそれぞれ直角に開いたとき、中指を電流の向き、人差し指を磁界の向きに合わせると、親指が力の向きを示します。

磁界中に置かれた導体(巻線)に電流を流すと、電流の向きと磁界の向きに対して垂直方向に力が発生する仕組みです。この力がローターに回転トルクを生み出し、整流子とブラシによる電流方向の切り替えにより、ローターは同一方向に連続回転します。

設計により異なるものの、ローターが一定角度ごとに整流子のセグメントが切り替わり、巻線に流れる電流の向きが切り替わることで、回転力の向きは常に一定に保たれます。この連続的な整流作用により、滑らかな回転運動が維持される仕組みです。

単純明快な物理原理が、ブラシモータの信頼性と制御性の高さを支えています。産業機器やセキュリティ機器など、多様な分野で長年採用されてきた実績は、この基本原理の確かさを物語るものです。

 

ブラシモータの発電原理と特性

ブラシモータは、モータとしてだけでなく発電機(ダイナモ)としても機能する可逆性を持ちます。発電機(ダイナモ)とは、回転運動を電気エネルギーに変換する装置のことで、ブラシモータはこの双方向の変換能力を備えています。

外部から機械的に回転させると、巻線に起電力が発生し、ブラシと整流子を通じて直流電力が取り出せる仕組みです。この発電原理は「逆起電力(Back EMF)」としてモータ動作中にも重要な役割を果たします。

モータが回転すると逆起電力が発生し、供給電流を制限することで回転速度に応じた自己制御が働きます。また、急停止時には逆起電力が大きくなるため、ショートブレーキ(短絡制動)による制動力の調整が可能です。

このセクションで解説する内容

  • 逆起電力(Back EMF)とトルク特性
  • ショートブレーキ(短絡制動)の仕組み
  • 電圧・電流・速度の関係性

発電原理や特性を理解することで、速度制御や制動システムの最適設計に活かせます。

 

逆起電力(BACK EMF)とトルク特性

モータ回転中、巻線が磁界を横切ることで発生する逆起電力は、印加電圧に対して逆向きに作用し、実際に流れる電流を減少させます。逆起電力の大きさは回転速度に正確に比例するため、回転が速いほど大きな逆起電力が発生し、結果として電流が制限される仕組みです。

このため、無負荷時は高速回転し、負荷が増えると回転速度が低下してトルクが増加するという自己調整特性を持ちます。

具体的には、印加電圧から逆起電力を引いた電圧差が、実際にモータを駆動する有効電圧です。負荷トルクが増加すると回転速度が下がり、逆起電力が減少するため、より多くの電流が流れて必要なトルクを発生させます。逆起電力の大きさは回転速度に比例するため、速度センサレス制御にも応用されています。

この特性により、外部センサなしでもモータの動作状態を把握でき、制御システムの簡素化とコスト削減に貢献するものです。医療機器や産業用工具では、この自己調整特性を活用した負荷変動への対応が評価されています。

 

ショートブレーキ(短絡制動)の仕組み

モータ端子を短絡させると、慣性で回転するローターが発電機(ダイナモ)として動作し、短絡回路に電流が流れます。この電流が磁界と相互作用することで、回転を妨げる制動トルクが発生する仕組みです。制動トルクの大きさは回転速度に比例するため、高速回転時ほど強い制動力が得られ、停止に近づくにつれて制動力は徐々に弱まります。

項目特徴
制動方式電気的制動(機械的摩擦なし)
応答性迅速かつ安定した停止
主な用途精密位置決め、緊急停止システム
耐久性直接的な摩耗部品が少なく長寿命

機械的なブレーキと異なり、摩擦による部品摩耗や発熱がないため、繰り返しの制動動作でも性能劣化が起きにくい特長があります。ショートブレーキは機械的な摩擦を使わないため、精密位置決めや緊急停止が求められる用途で有効な電気的制動方式の一つです。

医療機器の内視鏡駆動やカメラのレンズ制御など、滑らかで正確な停止が必要な場面でよく採用されています。また、産業用ロボットのアーム制御では、予期せぬ動作を瞬時に停止させる安全機構としても活用されるものです。

 

電圧・電流・速度の関係性

ブラシモータの回転速度は印加電圧にほぼ比例し、トルクは電流に比例します。例えば、12V仕様のモータに6Vを印加すると、理論上は定格回転数の約半分で動作する仕組みです。無負荷時には逆起電力により電流が最小となり高速回転しますが、負荷が増えると回転速度が低下し逆起電力が減少するため、より多くの電流が流れてトルクが増加します。

実際の制御では、PWM(パルス幅変調)制御により電圧の実効値を調整し、回転速度を自在にコントロールできます。デューティ比を変化させることで、モータに供給される平均電圧が変わり、滑らかな速度制御が実現される仕組みです。この特性を理解することで、電源仕様やドライバ回路の設計、負荷条件に応じた最適なモータ選定が可能です。

産業用工具や医療機器など、負荷変動が大きい用途では、この電圧・電流・速度の関係性を考慮した設計が必要となります。セキュリティ機器の電子錠では低電圧でも確実に起動できる特性が評価され、光学機器では精密な速度制御が求められます。

 

ブラシモータの実用特性と産業応用における選定ポイント

ブラシモータは、構造のシンプルさと制御の容易さから、多岐にわたる分野で採用されています。直流電源に直結するだけで駆動でき、他方式と比べて制御回路がシンプルになりやすいので、システム全体のコスト削減と小型化に貢献します。

一方で、ブラシと整流子の機械的接触により、定期的なメンテナンスや寿命管理が必要です。また、接触部で発生する火花やノイズは、防爆環境や高精度制御が求められる用途では考慮すべき要素となります。

このセクションで解説する内容

  • メリット:シンプルな構造と制御性
  • デメリット:ブラシ摩耗と寿命管理
  • 産業応用事例と最適な用途選定

コストと性能のバランス、メンテナンス性、環境条件を総合的に評価し、用途に最適なモータを選定しましょう。

 

メリット:シンプルな構造と制御性

ブラシモータ最大の利点は、構造がシンプルで外部制御回路が不要な点です。ブラシレスモータやステッピングモータと異なり、専用のドライバICや複雑な制御基板を必要としないため、システム全体の部品点数を削減できます。

【ブラシモータの主なメリット】

  • 直流電源に直結するだけで駆動可能
  • 速度制御が電圧調整やPWM制御で容易
  • 製造コストが比較的低い
  • 小ロット生産にも対応しやすい

試作段階から量産まで幅広い開発フェーズで採用でき、この手軽さが多くの産業分野で長年支持される理由となっています。開発初期段階での動作確認や、コストを抑えた製品設計において、ブラシモータの導入しやすさは大きな利点です。

特に新製品開発では、まずブラシモータで基本動作を確認してから、必要に応じてほかのモータ方式への移行を検討するアプローチが一般的です。また、電源回路の設計も単純化でき、バッテリー駆動の携帯機器やセキュリティ機器では、この特性が開発期間の短縮とコスト削減に直結します。

 

デメリット:ブラシ摩耗と寿命管理

ブラシと整流子の機械的接触により、連続使用によって摩耗が進行します。摩耗が進むとモータ性能が低下し、最終的には動作不良に至るため、使用時間や環境に応じた定期的なメンテナンスが必要です。

また、接触部で発生する微小な火花は電気ノイズの発生源となるため、精密制御や無線通信を伴う用途では対策が求められます。寿命とメンテナンス性を考慮した設計が求められるため、長時間の連続運転が必要な用途や、メンテナンスが困難な環境では、ほかのモータ方式との比較検討も必要です。

 

産業応用事例と最適な用途選定

ブラシモータは、医療機器から産業用工具まで、多様な分野で実績があります。

分野主な用途例
医療機器内視鏡、ポンプ、手術用工具
産業用工具電動ドライバ、釘打ち機
光学機器カメラレンズ駆動、フォーカス機構
セキュリティ機器電子錠、スマートロック

特に、コスト重視の量産品や、シンプルな制御で済む用途に適しています。

タキロンシーアイでは、お客様の用途や要求仕様に応じた最適なモータ選定とカスタマイズ提案を実施しています。長年の実績に基づく高品質なマイクロモータを提供しておりますので、製品開発でお困りの際はお気軽にお問い合わせください。

 

まとめ

ブラシモータは、ブラシと整流子による機械的整流作用により、直流電源で駆動できるシンプルな構造のモータです。フレミングの左手の法則に基づく回転原理と、逆起電力による自己制御特性により、幅広い産業分野で活用されています。

構造のシンプルさと制御の容易さが大きなメリットである一方、ブラシ摩耗による寿命やメンテナンスの必要性、ノイズ発生といったデメリットも存在するものです。用途や環境条件を総合的に評価し、最適なモータを選定することが製品開発の成功につながります。

 

製品情報・お問い合わせ

タキロンシーアイのマイクロモータ製品については、以下のウェブサイトで詳細をご覧いただけます。

お客様の製品開発における小型モータ選定でお困りの際は、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。技術担当者が用途や要件をヒアリングし、最適なソリューションをご提案いたします。

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