産業機器や医療機器、自動車部品など、多様な分野で活躍するモーターシャフトは、モータの回転運動を正確に伝達する重要部品です。モーターの性能を最大限に引き出すには、用途に応じた適切な形状設計、材質選定、そして高精度な加工技術が不可欠となります。
本記事では、モーターシャフトの基本的な役割と構造から、ストレート形状やステップ形状などの代表的な種類、S45CやSCM材といった材質特性、さらに旋盤加工や研削加工などの主要な製造工程まで、技術者の方が実務で活用できる情報を詳しく解説します。
| 監修:タキロンシーアイ株式会社電子部品営業グループ 1919年の創業以来、プラスチック加工のリーディングカンパニーとして培った高度な技術力と知見に基づき、本記事を監修しています。当部では、超小型・高精度なマイクロモータの市場動向や最新技術を常に分析し、設計者や開発者の皆様へ付加価値の高い情報を提供することに注力しています。製品の特性を熟知した専門チームとして、正確かつ実用的なコンテンツの発信を通じて、お客様の課題解決と技術革新をサポートいたします。 |
モーターシャフトとは

モーターシャフトとは、電動モータの回転運動を外部機器へ伝達するための回転軸です。産業用ポンプから自動車のトラクションモータまで用途は多岐にわたり、必要とされる直径や形状が個別に設計される部品です。高速回転に耐え得る耐久性と同軸度の精度が求められる重要部品であり、その品質がモータ全体の性能と信頼性に大きく影響します。
このセクションで解説する内容
- モーターシャフトの基本構造と役割
- モーターシャフトが使われる主な用途
- モーターシャフトに求められる性能
以下では、モーターシャフトの基本構造と役割、主な用途、そして求められる性能について解説します。
モーターシャフトの基本構造と役割
モーターシャフトは回転軸本体、軸受部、動力伝達部の3つで構成されます。回転軸本体はモータの中心を貫く円筒状の部材であり、回転運動の基盤です。ベアリング(軸受)と接触する軸受部には、高い真円度と滑らかな表面粗さが求められます。接触面に凹凸やゆがみがあると、回転時の振動や摩耗が増加し、モータの寿命を縮める要因となります。
動力伝達部にはキー溝、スプライン、ネジなどが加工され、他部品との確実な結合が可能です。キー溝はギアやプーリーを固定するための構造で、回転時の滑りを防ぎます。スプラインは軸の外周に複数の歯を刻む形状で、より大きなトルクを伝達できます。
モーターシャフトが使われる主な用途
モーターシャフトは産業用ポンプ、工作機械、電動工具、医療機器の駆動部、自動車のトラクションモータなど多岐にわたる分野で使用されています。産業用ポンプでは、流体を送り出すインペラを回転させるためにモーターシャフトが不可欠です。工作機械では切削工具を高速回転させる主軸として機能し、加工精度を左右します。電動工具では、ドリルなどの刃を駆動させ、作業効率を高めます。
医療機器分野では、内視鏡カメラや手術用ポンプの駆動源として採用されてきました。特に高い制御精度が求められる医療・光学機器においては、コアレスモータとの併用により精密な動作が可能となります。自動車分野でも電気自動車の主機として走行性能を支えるなど、その役割は重要です。各用途で求められる性能は異なりますが、高い信頼性と精度が共通の要求事項となります。
モーターシャフトに求められる性能
モーターシャフトには高速回転時の振動を抑える同軸度精度、長時間使用に耐える耐久性と耐摩耗性、確実なトルク伝達能力が必要です。シャフトの回転中心のズレを示す同軸度精度が低いと、異音や振動の原因となります。軸受部の表面粗さは摩耗防止のため厳格に管理されており、表面が粗いとベアリング(軸受)との摩擦が増加し、発熱や摩耗が進みます。
耐久性では疲労強度が重視されるため、材質選定や熱処理で性能を確保します。用途により耐食性や非磁性も要求され、医療機器ではステンレス鋼、MRI環境下で使用される部品では非磁性材の採用が不可欠です。特に医療機器や精密機器では、鉄心を持たないコアレスモータと組み合わせることで、コギングのない滑らかな回転と高精度な制御が可能になります。
モーターシャフトの種類と材質

モーターシャフトは取り付ける部品の種類、求められるトルク、精度要件に応じて最適な形状と材質が選定されます。基本となるストレート形状とステップ形状があり、プーリーやギアなどを固定する方法としてキー溝付き形状とフラット形状があります。
材質では、もっとも広く使用されているS45C、より高い強度が必要な場合はSCM435などの合金鋼、耐食性が求められる環境ではSUS303やSUS304のステンレス鋼が選ばれます。
このセクションで解説する内容
- ストレート形状とステップ形状
- キー溝付き形状とフラット形状
- S45CとSCM材、ステンレス鋼の特性
以下では、代表的な形状の特徴と、各材質の特性について詳しく解説します。
ストレート形状とステップ形状
ストレート形状は全長で一定の直径を持つもっともシンプルな構造であり、加工の容易さと低コストが大きな利点です。主に旋盤加工で製作できるため、納期を短縮しやすく、小型モータや汎用モータに採用されています。設計の自由度は限定されますが、ベアリングと動力伝達部を同一直径で構成できる用途では最適な選択肢です。
一方、複数の段差を持つステップ形状は、軸受部と動力伝達部で直径を個別に設定可能です。段差が部品の位置決めストッパーとして機能するため、組み立て時の位置精度と作業効率が高まります。例えば、ベアリング部(軸受)を細く、ギア取り付け部を太く設計すれば、ベアリングの小型化とトルク伝達能力を同時に実現可能です。複数の機能部品を1本のシャフトに配置する医療機器や精密機器においても、このステップ形状が重宝されます。
キー溝付き形状とフラット形状
キー溝付き形状はシャフト外周に細い溝を刻み、キーを挿入してギアやプーリーを確実に固定する手法です。キーと溝がかみ合うことで回転方向の滑りを防ぎ、大きなトルクを効率よく伝達できます。産業用ポンプや工作機械といった高負荷な用途において、この方式は広く使用されています。キー溝の寸法はJIS規格等で標準化されており、互換性に優れた設計が可能です。
フラット形状はシャフトの一部を平らに加工し、セットスクリューで部品を固定します。加工がキー溝より簡単で、小型モータや低トルク用途に適した構造です。フラット部分にセットスクリューの先端が食い込むことで固定されるため、取り付け・取り外しが容易です。いずれも滑り防止に効果的ですが、トルクの大きさやコスト要件に応じて適切に使い分けられます。
S45CとSCM材、ステンレス鋼の特性
S45Cは炭素含有量約0.45%の中炭素鋼で、強度と加工性に優れます。引張強度は570~750Mpa程度、硬度はHB160~220程度であり、一般的な産業機器や電動工具に広く使用されています。切削加工がしやすく、熱処理により表面硬度を高められるため、コストと性能のバランスが良好です。
SCM材はクロムとモリブデンを添加した合金鋼で、より高い強度が求められる用途に適しています。SCM435は引張強度930以上、硬度はHB269~331程度の高い機械的性質を誇り、自動車部品などの厳しい条件下で採用されます。
耐食性を重視する医療機器や食品機械では、ステンレス鋼の活用が一般的です。SUS303は快削性に優れ加工しやすく、SUS304は耐食性が高い汎用材で、環境に応じて選定されます。MRI環境下など非磁性が必須となる現場では、SUS316などの特殊な鋼材が選定されることがあります。
モータシャフトの加工方法

モータシャフトの製造には、旋盤加工、研削加工、歯切り加工、転造加工、熱処理など複数の工程が組み合わされます。
このセクションで解説する内容
- 材料切断とセンタリング加工
- 旋盤加工と研削加工
- 歯切り加工・転造加工と熱処理
以下では、各加工工程の目的と重要性について詳しく解説します。
材料切断とセンタリング加工
図面に基づき必要な長さに材料を切断後、センタリングマシンで両端面を加工し、回転軸の基準となるセンター穴を設けます。センター穴は後工程の旋盤加工や研削加工でシャフトを固定するための基準点となるため、位置精度が極めて重要です。
この工程で基準の平面度や同軸度を正確に出すことが、後工程の加工精度を決定づける重要な要素です。仮に端面の傾きや穴のズレが生じると、旋盤加工時にシャフトが偏心して回転し、真円度の確保が困難となります。材料切断においては、垂直度を保つために帯鋸盤や丸鋸盤が一般的に用いられています。
切断時のバリやゆがみを抑えるべく、速度管理を徹底することも欠かせません。センタリング加工の完了後は、穴の深さや角度が規格値内にあるかを厳密に確認することが大切です。
旋盤加工と研削加工
旋盤加工は回転する素材を切削工具で削り、外径や段差などの基本形状を成形する工程です。CNC旋盤により高い再現性を実現し、複雑なステップ形状やテーパー形状も正確に加工できます。
旋盤加工では切削速度、送り速度、切り込み深さを最適化することで、加工精度と表面粗さを向上させます。研削加工は砥石で表面を微細に削り、ミクロン単位の寸法精度と表面粗さを仕上げる高精度な仕上げ工程です。軸受部などの要求仕様に応じ、円筒研削盤を用いて要求を満たす表面を作り上げます。研削加工により、旋盤のみでは困難なレベルの真円度と同軸度を得ることが可能です。
加工中は冷却液で発熱を抑え、熱膨張による寸法誤差を防ぎます。最終的に三次元測定機等で各精度を測定し、品質基準の適合を確認する流れです。
歯切り加工・転造加工と熱処理
ホブ盤での歯切りや転造盤による加工を施し、スプラインやギア形状を形成します。歯切り加工は切削工具でシャフト外周に歯を刻む手法であり、複雑な歯形にも柔軟に対応できるのが特徴です。ホブ盤を用いる際は、円筒状の工具を回転させながらシャフトに押し付け、連続的に歯を削り出していきます。
一方、材料を塑性変形させる転造加工は、表面が硬化するため耐久性に優れています。転造ダイスで押圧すれば材料の繊維流れが切断されず、疲労強度の向上につながる仕組みです。切削に比べて加工時間が短縮されるため、大量生産にも適しています。さらに表面硬度を高めるため、高周波焼入れや浸炭焼入れといった熱処理を行います。
前者は表面のみを急熱・急冷して硬化させる方法で、芯部の靭性を保ちつつ高硬度を実現できるものです。後者は炭素を浸透させる手法であり、より深い硬化層による耐摩耗性の向上が見込めます。熱処理の完了後は、ゆがみを矯正した上で再度研削を施し、最終寸法に仕上げる流れです。
まとめ

モーターシャフトは、モータの回転運動を正確に伝達する重要部品であり、用途に応じた形状設計、材質選定、高精度な加工技術が求められます。本記事では、モーターシャフトの基本構造と役割、ストレート形状やステップ形状などの代表的な種類、S45CやSCM材といった材質の特性、旋盤加工や研削加工などの主要な製造工程を解説しました。
精密な制御が必要な産業機器や医療機器には、回転ムラや振動の少なさが性能に直結するため、コギングレスで滑らかな回転を実現するコアレスモータが適しています。コアレスモータは鉄心を持たない構造により、回転ムラや振動が少なく、高精度な位置決めや速度制御が可能です。タキロンシーアイでは、高性能なコアレスモータを提供しており、お客様の用途に合わせたカスタマイズも対応可能です。お気軽にお問い合わせください。
製品情報・お問い合わせ
タキロンシーアイのマイクロモータ製品については、以下のウェブサイトで詳細をご覧いただけます。
- 製品サイト:https://cik-ele.com/
- コアレスモータ:https://cik-ele.com/products/list/coreless_motor/
- ブラシレスモータ:https://cik-ele.com/products/list/brushless_motor/
- ギアードモータ:https://cik-ele.com/products/list/gearhead/
- エンコーダ:https://cik-ele.com/products/list/encoder/
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