製造業やロボット、医療機器など幅広い分野で、機械を動かす役割を担うのがアクチュエーターです。アクチュエーターとは、電気、油圧、空気圧などのエネルギーを用いて可動部品を変位させる装置の総称です。自動ドアの開閉部やロボットアームの関節駆動など、身近な場面でも数多く活用されています。一口にアクチュエーターといっても、電動式・空気圧式・油圧式をはじめ複数の種類があり、仕組みや得意とする動作領域はさまざまです。
本記事では、アクチュエーターの基本的な定義から種類ごとの仕組み、さらに代表的な用途までを体系的に解説します。用途に応じた選定のポイントについても整理していますので、製品設計や部品選定の参考情報としてご活用いただけます。
アクチュエーターの定義と基本的な仕組み

アクチュエーターは、製造業・ロボット・医療機器・自動車などの分野で使用される駆動装置です。入力されたエネルギーを物理的な動作へと変える機能を持ち、さまざまな機械の動作制御に不可欠な要素として組み込まれています。身近な例では自動ドアの開閉機構やロボットアームの関節部分にもアクチュエーターが組み込まれており、産業分野に限らず幅広い場面で活用されています。
アクチュエーターの全体像を正しく理解するには、まず定義と役割を押さえた上で、内部構造や動作の種類まで体系的に把握する必要があります。
このセクションで解説する内容
- アクチュエーターが担う役割
- エネルギーを動きに変換する基本構造
- アクチュエーターが生み出す3つの動作
ここからは、アクチュエーターの定義と役割、動力源と駆動機構の関係、そして直線・回転・揺動という3つの動作タイプについて順に確認していきます。
アクチュエーターが担う役割
アクチュエーターとは、外部から受け取ったエネルギーや信号を物理的な運動へ変換する駆動装置です。英語では「actuator」と表記し、日本語では「作動装置」や「駆動装置」と呼ばれます。機械やロボットの内部で実際に「動き」を生み出す部分です。工場の生産ラインにおけるワークの搬送・位置決めや、医療機器の精密な動作制御など、活用範囲は幅広い分野に及びます。
エネルギーを動きに変換する基本構造
エネルギーを動きに変換するアクチュエーターの基本構造は、「動力源」と「駆動機構(伝達機構)」の2つの要素で成り立っています。動力源とは、エネルギーを力へ変換する部分です。電動アクチュエーターではモータ、空気圧式では圧縮空気、油圧式では作動油の圧力がそれぞれ動力源に該当します。一方、駆動機構は動力源で生まれた力を目的の動作へ伝える部分であり、ボールねじ・すべりねじ・ギヤ・ベルトなどが代表的な伝達部品です。例えば電動アクチュエーターでは、モータの回転力をボールねじで直線運動に変換したり、ギヤを介してトルクを調整したりする仕組みで目的の動作を実現します。
アクチュエーターが生み出す3つの動作
アクチュエーターが生み出す動作には、直線運動・回転運動・揺動運動の3種類があります。主な違いは以下のとおりです。
| 動作タイプ | 内容 | 代表的な用途例 |
| 直線運動 | ピストンのように一方向へ往復する動き | 搬送装置・プレス機・リフト |
| 回転運動 | モータ軸を中心に連続回転する動き | ポンプ・ファン・レンズ駆動 |
| 揺動運動 | 一定角度の範囲内で往復回転する動き | バルブ開閉・ロボット関節 |
用途に合った動作タイプの選定が、アクチュエーター導入の検討事項となります。直線運動と回転運動を組み合わせる場面では、複数のアクチュエーターを連動させて制御するケースもあります。
アクチュエーターの主な種類と特徴

アクチュエーターは、動力源の違いによって大きく3つの種類に分類されます。電気モータを動力源とする「電動アクチュエーター」、圧縮空気で駆動する「空気圧アクチュエーター」、そして作動油の圧力を利用する「油圧アクチュエーター」です。
3種類のアクチュエーターの特徴を比較すると、以下のとおりです。
| 比較項目 | 電動式 | 空気圧式 | 油圧式 |
| 制御精度 | 高い(多点位置決め可) | 低い(2点間動作が中心) | 中程度(推力・速度制御は容易) |
| 出力 | 中程度 | 中程度 | 大きい |
| 動作速度 | 中~高速 | 高速 | 低~中速 |
| メンテナンス | 少ない | 少ない | 作動油の管理が必要 |
| 設置環境 | 汎用性が高い | 防爆・クリーン環境に適合 | 油漏れ対策が必要 |
用途や設置環境に応じて各方式の強みと制約を照らし合わせ、最適な駆動方式を選定する必要があります。
このセクションで解説する内容
- 電動アクチュエーターの仕組みと特徴
- 空気圧アクチュエーターの仕組みと特徴
- 油圧アクチュエーターの仕組みと特徴
ここからは、各種類の動作原理と強みを整理しながら、用途に応じた使い分けの判断材料となる情報を解説します。
電動アクチュエーターの仕組みと特徴
電動アクチュエーターは、電気モータの回転力をボールねじやギヤなどの伝達機構を介して直線運動や回転運動に変換する駆動装置です。電気エネルギーを機械エネルギーへ変換することで動作します。主な特徴は以下のとおりです。
【電動アクチュエーターの主な特徴】
- 位置・速度・トルクの精密制御
- 多点での位置決めへの対応
- 通常運転時のメンテナンス頻度の低さ
- エネルギー変換効率の高さ
精密な位置決めや速度制御が求められる用途で、電動アクチュエーターが採用されることがあります。
空気圧アクチュエーターの仕組みと特徴
空気圧アクチュエーターは、コンプレッサーで圧縮した空気を動力源とし、シリンダ内のピストンを押し出す力で駆動する装置です。エアシリンダとも呼ばれ、シリンダチューブ・ピストン・ピストンロッドなどのシンプルな部品で構成されています。
高速動作が可能な反面、空気の圧縮特性により中間位置での正確な位置決めには向いていません。2点間の高速移動や把持動作など、シンプルな動作パターンに適した駆動方式です。
油圧アクチュエーターの仕組みと特徴
油圧アクチュエーターは、作動油の圧力をエネルギー源としてピストンを駆動させる装置で、油圧シリンダとも呼ばれます。小さな装置サイズで大きな力やトルクを発生できる点が強みであり、建設機械やプレス機、工作機械など高い推力を必要とする分野で採用されています。
アクチュエーターの代表的な用途と選定のポイント

アクチュエーターは、工場の生産ラインから産業用ロボット、医療機器まで、幅広い分野の自動化を支えています。ただし、用途ごとに求められる性能や設置条件は大きく異なるため、導入にあたっては要件を正確に整理した上で適切な方式を選定する必要があります。特に電動アクチュエーターでは、駆動方式の選定に加え、動力源の仕様まで視野に入れた総合的な判断が必要です。
このセクションで解説する内容
- 製造ラインでの工程別の使い分け
- ロボットや医療機器での活用事例
- アクチュエーター選定時に確認すべき要素
ここからは、代表的な産業分野での活用シーンと、選定時に押さえておきたい評価基準を順に解説します。
製造ラインでの工程別の使い分け
製造ラインでは、工程ごとの要件に応じて電動式と空気圧式のアクチュエーターが使い分けられています。代表的な工程と適したアクチュエーターの組み合わせは以下のとおりです。
【製造ラインにおける主な活用工程】
- ハンドリング工程:多品種ワークや変形しやすいワークの把持に電動式を採用
- 搬送工程:多点位置決めが必要な搬送には電動式が適合
- クランプ工程:2点間の高速な把持動作にはエアシリンダを活用
- 圧入工程:荷重制御が求められる圧入作業には電動式による力制御を適用
工程の特性に合った駆動方式を選定することが重要です。
ロボットや医療機器での活用事例
産業用ロボットは、JIS B 0134:2015において「自動制御され,再プログラム可能で,多目的なマニピュレータであり,3軸以上でプログラム可能で,1か所に固定して又は移動機能をもって,産業自動化の用途に用いられるロボット。」と定義されており、アクチュエーターはマニピュレータを構成する要素の一つです。ロボットの各関節のアクチュエーターには、用途に応じた応答性や回転特性が求められる場合があります。医療分野では、歯科治療機器や内視鏡など、さまざまな機器にアクチュエーターやモータが組み込まれ、モータの信頼性や動作精度に対する要求が高いとされます。
アクチュエーター選定時に確認すべき要素
アクチュエーター選定では、複数の評価軸を総合的に検討する必要があります。主な評価項目は以下のとおりです。
| 評価項目 | 確認する内容 |
| 動作タイプ | 直線・回転・揺動のいずれが必要か |
| 推力・トルク | 対象物を駆動するために必要な力の大きさ |
| 動作速度 | 工程や用途が求めるサイクルタイム |
| 位置決め精度 | 停止位置の許容誤差範囲 |
| 設置スペース | 機器筐体や装置内の組み込み可能寸法 |
| 使用環境 | 温度・湿度・防爆要件・クリーン度 |
| 寿命・耐久性 | 連続稼働時間や繰り返し動作回数の要件 |
電動アクチュエーターでは、駆動源となるモータの仕様も検討要素となります。コギングレスによる滑らかな回転や、低電圧起動、省電流設計など、モータ固有の技術特性を踏まえた仕様検討が求められます。
まとめ

アクチュエーターは、電気・空気圧・油圧などのエネルギーを機械的な動きに変換する駆動装置であり、製造業の生産ラインや産業用ロボット、医療機器など幅広い分野で活用されています。電動・空気圧・油圧の各タイプにはそれぞれ異なる強みと制約があり、動作タイプ・推力・速度・精度・設置環境といった要件に応じた適切な選定が求められます。電動アクチュエーターでは、駆動源となるモータの仕様についても検討が必要です。
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- 製品サイト:https://cik-ele.com/
- コアレスモータ:https://cik-ele.com/products/list/coreless_motor/
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- ギアードモータ:https://cik-ele.com/products/list/gearhead/
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